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証類本草データベース解説
民族薬物DBのうち、漢方医学や中国医学で用いられる生薬の薬効や使用方法を調べるためには和漢薬DBが適している。このデータベースには、生薬の古来の薬効、古来の原植物、薬効や原植物の歴史的変遷などが参照できるように、中国の最も権威がある本草書である『証類本草(経史証類大観本草)』の原文を画像データとして収載している。しかし、原文の内容を理解することは専門家であっても難しかった。そこで、『経史証類大観本草(柯氏本)』を我が国として初めて翻訳し、データベース化する事業を開始した。
『証類本草』は、中国で1世紀頃に創刊された本草書『神農本草経』を基本とし、その後収録文献や品目(生薬)を追加しながら12世紀頃までに31巻発刊された最も権威がある薬物書である。収載品目は約1,700種類で、薬用植物、薬用動物、薬用鉱物、さらには食用とされる果実類、米穀類、野菜類、獣禽類などの効能が、形態や産地などとともに時代毎に収載される(各時代の本草書の内容が追加記載される)。医薬学及び植物学方面の内容の正確さや情報量の豊富さから中国はもとより日本の生薬学者等から高い評価を受けているにもかかわらず、古く難解な漢文で記載されているため、これまで国訳本は一切出版されてこなかった。
そこで、原文の翻訳を専門家(NPO法人 文字鏡ネット)に委託し、その後、翻訳文を和漢医薬学総合研究所の出身者で構成するデータベース作成委員会で吟味し、校正したのち、翻訳文を原文とともにデータベースとして構築することにした。さらに、同時代に著され、薬効の記載に優れている本草書『本草衍義』の記文についても同様に翻訳、校正してデータベースに構築した。
この証類本草DBを、先の民族薬物DBにリンクさせ、総合的な生薬・薬草データベースとして完成させ、広く研究者や一般市民へ公開することにより和漢医薬学の発展に寄与することを目的とした。『証類本草』には食品に分類される品目も収載されていることから、これまでの科学的観念による栄養学的解釈とは別に、薬食同源の観点から薬効ならぬ「食効」に関する情報が提供できるものと考えている。

約1,700種類の証類本草収載品目について、生薬名、生薬名読み、証類本草(本草衍義を含む)の原文テキスト、翻訳文テキスト、翻訳文画像(GIF)が収載されたデータベースである。本文中には規格(JIS、UNICODE)外の文字が多用されているため、「今昔文字鏡」フォント(文字鏡ネット作成)を用いて正しい文字とした後、翻訳文画像として登録した。その他に、索引、目録、用語解説を作成し、検索時には目録を、また翻訳文画像を閲覧する際には用語解説を参照できるように設計した。また、民族薬物DBの学術情報へもリンクさせた。
検索方法や検索結果表示方法は一般用と専門用(学内用)で異なる。一般用では、直接または目録頁を参照後、生薬の読みや先頭文字の画数、または巻数で検索条件指定して、目的とする生薬に関する証類本草の原文画像及び翻訳文画像、民族薬物DBの学術情報を閲覧できるようにした。一方、学内用では、薬名コード、生薬名、読みで検索できるほか、原文テキスト及び翻訳文テキストの全文検索を可能にし、また絞り込み検索も可能にした。検索条件指定後、検索結果一覧が表示され、生薬を指定すると、詳細画面において原文テキストと翻訳文テキストが相対して閲覧できる。同時に表示される索引情報から、民族薬物DBの学術情報も閲覧することができる。
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 2005年4月22日付
(北日本新聞より)
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